歴史から学ばない愚かさ

 最近、同じ町にある組合派教会(UCC)の秘書をしているPatというご婦人から連絡を頂きました。「是非、見てもらいたいものがあるから、時間を取っていただけますか?」とのこと、早々に出かけて行って見せて頂いた物は、なんと日章旗。しかもただの旗ではなく、第二次大戦中に徴兵で出征した兵士に、友人、仲間達が寄せ書きしたものでした。兵士の名は渡邊綱吉。寄せ書きには「友よ、死んで帰れ」だとか「皇軍に敵なし」「忠、力、義」とか戦時中の天皇を祭り上げた軍国主義日本一色でした。

 何故この旗がアメリカ人の家にあったのか?Patさんの伯父さんが第二次大戦の帰還兵で、その彼がソロモン群島のガダルカナルから持ち帰った物でした。ガダルカナルと言えば日本とアメリカ双方多大な犠牲者を出した激戦区。つまり上述の渡邊さんはそこで戦死したわけです。そこで彼が身につけていた日の丸をアメリカ兵が持ち帰った。それが60年経った今になって日本人の牧師である私の所に来た。正しくは一時預かりですが、Patさんは私が注釈して旗の意味を知るや「これはできるなら遺族に返したい。」とおっしゃって下さいました。

 60年前の日本は軍部独裁政権下、正に今のCラクや北朝鮮(或いはアメリカ)に似ており、一般国民は事実を何も知らされていませんでした。一方的に天皇は現人神、天皇の国は神国、その群は皇軍、迎えるアメリカや欧州は「鬼畜米英」と教えられ、多くの若者が「天皇の為、お国の為、愛する人の為」と戦争に駆り出され死んでいきました。まだ二十歳前後の将来ある若者達、これから恋をして、結婚して、家庭を築いて、、、という幸せを愚かな独裁者、政治家、指導者によって奪われてしまいました。

 今また愚かな指導者、独裁者によって同じ悲劇が繰り返されようとしています。全く罪の無い、何も知らない市民、女性や子供など弱い立場にいる人たち、戦争に駆り出される兵士達の命が危険にさらされています。

 渡邊綱吉さんの出征祝いに送られた日章旗が悲しく「同じ過ちを繰り返さないで!」と訴えています。

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