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Fahrenheit(華氏)911を観て

2004年7月8日

 先日、カンヌでグランプリを取ったマイケル・ムーアの映画、Fahrenheit 911を観てきた。「でかした!」或いは「してやったり!」と観終わった時、殆どの観衆が思ったのではないだろうか。久しぶりに映画館で映画終了時の拍手を聞いた。思わず自分も拍手していた。

 この映画はブッシュ大統領がいかに思慮浅く大統領としての資質に欠けているか、また彼を含め今のホワイトハウスのスタッフがサウジアラビアの石油長者達と密接な関係があるかを驚くほどの手腕で描いている。映画の初めから4年前の大統領選挙では民主党の候補ゴア副大統領が実際には勝っていたであろうというブッシュ批判に始まり、ブッシュの若い頃から現在に至るまでの無能ぶりを「これでもか、これでもか」と訴えている。またイラク戦争が全く事実無根の民衆操作の上に成り立っているということも主張し、戦争で犠牲になったイラクの市民、アメリカの若い兵士達、その親の悲しみを描写し、観ている者を更なる憤り、悲しみへと誘う。

 映画の中では、以前読んだムーアの本(タイトルは忘れました)の中に書かれていた驚くべき事実も出てきた。911以降、アメリカがNationalismに走りA警備を厳重にしているが、実は巨大資本との癒着で、一方ではセキュリティーを厳重にし、飛行機に色々な物の持ち込みを禁じながら、一方では「これは危ないのでは?」と思われるタバコのライターとかを持ち込ませる・・・といった事実も皮肉タップリに描かれていた。彼の前作の映画Bowling・・・は観ていないが、改めて観たくなった。近所のビデオ屋に行こうと思う。

 マイケル・ムーアの作品は当初ディズニーが配給元として全国の映画館に出す予定だったそうだが、内容が余りにも政治色の強いブッシュ批判の為、配給を取り止め、一時はお蔵入りする危険もあったと聞いた。しかしカンヌでグランプリを取り、ヨーロッパで絶賛の嵐が巻き起こり、今回の全国上映に漕ぎ着けたとか。何かと話題を提供する。しかしよくよく考えればディズニーもマイケル・ムーアが作る映画なのだからミッキー・マウスやドナルド・ダック、或いはファンタジー映画でないことは解りそうなものだが・・・何故、彼と映画配給契約をしたのか?途中で降板するくらいなら、最初からしなければ良かったのに、と思うのは私だけではあるまい。アメリカではディズニー・ランド、ディズニー・ワールドはフロリダとカリフォルニアにあるがフロリダはブッシュの兄弟が知事をしているし、カリフォルニアはブッシュびいきのアーノルド・シュワルツネガーが知事をしているから、圧力でもかかったのかなァと勘ぐりたくなる。

 それにしてもアメリカは面白い国だ。一方ではブッシュを盲目的に支持し、戦争を肯定する人間が沢山いるかと思うと、一方では真っ向からそれを批判し、戦争反対を叫ぶ人間がいる。日本もそういった人間がいないとは思わないが、いまだに「お上」の国(1ヶ月くらい前ニューヨークタイムズに掲載された記事で日本及び日本人をそう形容した。)でお偉いさん(ブッシュに頭が上がらない政治家、総理大臣)が何か言うと皆猫も杓子も無思慮にそれに従い右に倣えになる。イラクで人質になった人達が救われて良かったと思ったのも束の間「自己反省」が足りないとか「自己責任」を取っていないなどと言って、針の筵に座らせるような「苛め」「精神的虐待」を平然とする。情けないこと甚だしい。

 日本でも体制に右へ倣えではない、マイケル・ムーアほどウイットに富んだ批評家、ドキュメンタリー作家、映画家が出てきて欲しい。既にいるのであればどなたか教えて下さい。

 因みに私の母校の一つエール大学のコミュニティーではブッシュを初めから批判し、馬鹿にしていた。彼が大統領になってすぐ2001年の5月(9・11事件の前だが)エール大学の卒業式に呼ばれたが、過半数の教授、学生はその事に反対した。彼が呼ばれたのは一部の栄誉好き、金権癒着している者たちの意向だったのではと思えてならない。

 昨日、ラジオを聴いていたら、偶然マイケル・ムーアがゲストだった。話はFahrenheit 911についてだったが、司会者が「ブレアー首相についての批判映画などもお考えですか?」と訊いたところ、ムーアは「考えていないでもないが、ブレアーはブッシュと違って賢いから、失敗の後、そのままそれを放置しないので、難しいかなァ・・・」とコメントしていた。ムーアはブッシュとブレアーを兄弟に喩えて、ブッシュを7歳の弟、ブレアーを12歳の兄とした。「同じいたずらをしてそれが発覚した時、7歳児はことの重大さ、意味が解らず同じ失敗をするが、12歳の兄はその事に気づいて、うまく責任を弟におっ被せるでしょう。だから難しい。皆、お馬鹿な弟のせいにしてしまうからね。」とコメントしていた。私は思わず「そうだなあ。」と頷いて苦笑した。



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